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「いいよ。ゆっくりで」 「ぐ……うぅっ」  嘔吐しそうになった遥人の変化にすぐさま気付いた彼が、機転を利かせて身体を持ち上げ便器へと顔を向かせたのだが、そんなことには気づけない。  耳元へそっと紡がれる声と、背中を撫でさする大きな掌。同時に遥人の口腔内へと長い指が挿し込まれ、喉奥あたりを圧迫されれば新たな吐き気を催した。  それから……吐き出せるものが無くなるまで、嘔吐を何度も繰り返してから、再び身体を抱き上げられてバスルームへと運ばれる。  抵抗できる体力もないから、なすがままに身を任せていると、「かわいい」などと言ってくるけれど、疲れ切った身体と共に心も虚ろになっていたから、何の反応も示せなかった。  タイルの上へと座らされ、寝衣を着たままの彼にシャワーを掛けられたのは覚えているが、そこで一旦記憶は途切れ、次に目覚めた時には再びベッドの上へと寝かされていて――。 「口、開けて」  命じる声に抗うことの出来ない遥人が口を開くと、少ししてから柔らかなものが唇へと触れてくる。

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