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 薄く瞼を開いた遥人が、それが何かを理解した刹那、接合はさらに深いものとなり、口腔内が甘い液体で少しずつ満たされていった。 「うっ……う」  だんだんと息が苦しくなって、たまらずそれを嚥下すれば、誉めるように頬を優しく撫でられる。  口移しで甘い液体を飲まされたのは分かったが、羞恥心よりも本能が勝り、唇が離れた瞬間、まるで「もっと」とねだるように、遥人は顎を反らせてしまった。  それほどに、喉がカラカラだったのだ。 「いいよ。ちょっと待って」  僅かな喜色を滲ませる声。それから続けて二度、三度と口移しをされるうち、遥人の意識は少しづつだけど冷静さを取り戻していった。 「……今泉……さん?」  ようやく喉が潤ったたところで、遥人は小さく問いかける。現に目の前にいるのだから、間違えようもないのだが、それでも……ここに居るはずのない人物だという思いがまだあった。 「遥人、違うよ。少し離れただけで、教えたこと忘れちゃった?」   「玲……どうして?」  名字ではなく名前で呼ぶように強要された過去を思い出し、再び遥人は問いかける。 「……可哀想。こんな痕になるくらい、酷いことされたんだ」  しかし、玲は質問に答えてはくれず、仰向けになった遥人の身体へ覆い被さり、首へと指で触れてきた。  僅かな怒りを滲ませた声に身体がビクリと震えてしまう。  至近距離にある端正な顔は笑みを象っているけれど、遥人が見ても分かるくらいに、酷く顔色が悪かった。

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