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――めんどくさい。
なぜ、自分に付けらる目付けは皆一様にうるさいのか?
高校時代は忍が常に側にいたことと、社会勉強という名目で、執事の春日はたまに様子を確認しに来るだけだった。
それが、父親が政界から失脚したのをきっかけに、命令されているからと言って玲の側から離れない。
「遥人も嫌だよな」
答えるはずのない遥人へと声を掛け、はだけたローブの袷から指を薄い胸へと這わせていく。鬱血している胸の尖りをトントンと指の腹でつつくと、痛いのか……気持ちが悦いのか「んぅっ」と小さな声がした。
高校三年生の冬から学校へ通えなくなったのは、玲にとってはまさに晴天の霹靂だった。
未成年との淫行という疑惑をかけられた父親は、「嵌められた」と怒りを露わにしていたが、父が政界を引退しても今泉家には問題がない。
なぜなら、今泉家は政治家を多く輩出している一族だが、戦後始めた食品メーカーも日本で一二を争う企業に成長しており、父親もその顧問として名を連ねているからだ。
そんなわけで、金銭的には何の問題も無かったが、報道は異常なくらいに白熱し、結果、玲は海外へ身を移すように父親から命じられた。
留学だと報じられたが、実際にはそうではない。日本の大学に合格し、休学届けを提出してから海外へと飛び立ったのだ。
遥人を日本に残していくのは本当に嫌だったけど、ほとぼりが冷めるまで待てと言われ、仕方なく従った。
もちろん、その間も遊んでいたわけではない。有名大学の短期プログラムへ参加したり、経営学や株の投資などを専門的に学んでいた。
そして……つい先日、ついに父への嫌疑が消え、日本へと戻ってきたのだ。
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