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 流石に萎えてしまったペニスの先から出ているリングをつつかれ、今度こそ抜こうと思った遥人が指を伸ばした途端、「ダメ」と冷たく放った玲に手首を捕まれ阻止されてしまう。 「な……んで?」 「射精させないほうが、長く可愛がれるから」  意味の分からないことを言いながら、笑みを浮かべる玲の表情に、いつかどこかで目にしたような既視感を遥人は抱いた。 「……れい、あの……」 「なに?」 「ちゃんと……寝てますか?」  自分もかなり疲弊しており、しかも下半身は酷い状態になっている。それでも思わず尋ねたのは、それほどまでに玲の顔色が悪く見えたからだった。 「今度は人の心配?」  視線の先、綺麗な顔が無表情に見つめてくる。いつもの遥人ならここで言葉を飲み込んでしまうところだが、なおも背中を撫で続けている彼の掌の温もりに……今なら彼に自分の言葉を聞いてもらえるような気がした。 「すごく……顔色が悪いです。さっき、点滴してたし……だから……」  どうにか喉から声を絞り出し、伝えられたのはそれだけだった。

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