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『今回のテスト、御園くん3位だったんだね。あれだけ休んでたのにすごいよ』
『……これは、まぐれだよ』
『今泉くんは4位だって。遂に首位陥落かぁ……彼も人間だったんだね』
――これは……確か……。
覚えのある長い廊下と、貼り出されている順位表。確かこれは、高校三年生のときの中間テスト後の記憶だ。
『代わりに宮本くんが上がってる。彼は大躍進だね』
『……そうだね』
隣で話す真鍋に頷き、小さな声で返事をすると、『危なかったな』と背後から急に肩を叩かれ、遥人は体を強ばらせた。
『俺は2位……か。真鍋君は?』
『俺? 俺は10位。いつもとあんまり変わらないかな』
『へえ、もっと出来ると思ってた』
『え? マジで? 俺、そんなに出来そう?』
柔らかな笑みを唇に湛え真鍋と話す堀田の姿に、性的暴力を振るう時の冷酷さは微塵もない。
『いや、なんとなく。それにしても、宮本君は凄いな。圏外からいきなり一位とか……爪を隠すタイプだとは思ってたけど、ビックリだよな』
背後から肩に手を乗せられて、遥人はコクリと頷き返すが、その順位が意味するものを深く考えようとはしなかった。
――少しも……考えなかったわけじゃないけど。
一緒の大学へ進学しようと口約束を交わした大雅が、言葉通り頑張ったのだとこのとき遥人は思っていたし、玲が四位に沈んだことも、ただの偶然だと思っていた。
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