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「大学、行きたいでしょう?」
嚥下する時の痛みに怯え、ドロリとした粥を口内で何度も咀嚼していると、当たり前の質問をされて力なく頷き返す。
自分がここに囚われてから何日経ったか分からないけれど、自分の身を案じる人がいないことは知っていた。
なにせ、大雅の家を後にしたのは、兄のところへ逃げればいいと堀田に言われた直後だったし、大学でも真鍋くらいしか付き合いのある人間はいない。
仮に、真鍋が遥人の欠席理由を大雅に訊ねてくれたとしても、兄のところにいると言われれば、それ以上深く詮索したりはしないだろう。
――どうしたら……いいんだろう。
勇気をだして粥をコクリと飲み込めば、痛みと吐き気に遥人の体は硬直し、指先が微かに震えてしまう。
考えても無駄なこと……と、心の中で言い聞かせてはみるけれど、思考そのものを止めることなど自分自身にもできなかった。
「そうだ、言い忘れていましたが、医師が平気だと診断すれば、大学へは通えます」
「え?」
思いもよらない発言に、思わず声を上げた遥人は、後ろに立つ春日のほうへ上半身ごと振り返る。
「あなたの保護者が玲とのルームシェアを再び許可しました。なので、ここから通うのが条件ですが、大学へは行けます。ちなみに、期末試験は来週からですから、無理にでも行かないといけませんね」
そう言いながら、テーブル上に置かれたグラスを手に取ると、遥人の指から匙を取り上げ、「飲んでください」と差し出してきた。
「ありがとう……ございます」
礼を告げながらグラスを手に取り、啜るように口へと含めば、桃を思わせる微かな甘みが舌から鼻へふわりと抜ける。
そこで初めて遥人は自分の喉が渇いていたことに気づき、ゆっくりと、時間をかけて、グラスの中身を飲み干した。
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