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「なに?」  不機嫌さを纏った声音に遥人は小さく首を振る。  こんなに明るく、しかも春日が見ている場所で、服を脱がされるのは嫌だ。暗ければいいという話ではないけれど、昼間のほうが夜に比べて背徳感がかなり大きい。 「恥ずかしい?」  当たり前の問いかけに、遥人は何度も頷いた。こんな時……自分の願いが叶った試しがないことを、身をもって知っているはずなのに、それでも抗わずにはいられない。なぜなら――。 「春日、抑えろ」  逃げようとした遥人の口から玲の指が出ていった刹那、パシリと乾いた音が響いて頬へと熱が広がった。続いてじわりと痛みが生まれ、打たれたのだと理解したところで、背後から伸びた春日の手により両方の腕を背後に引かれる。 「やっ……れい、やめ……んぅっ!」  掠れた声で懇願するけれど、途中で口を塞がれた。  玲がテーブル上にあったナプキンを、遥人の口へと突っ込んだのだ。 「また喘ぎ過ぎちゃうと、喉に悪いからな」 「う゛っ……んぅ」  ナプキンの端を後頭部へと回して固く結びながら、悪戯っぽく微笑んだ玲が遥人の頬へと触れてくる。  強く打たれた訳ではないが、頬に感じる鈍い痛みに心が竦んで悲鳴をあげた。  彼はいったい自分のことを、どうしたいというのだろう? 考えても仕方ないのに、疑問ばかりが頭に浮かぶ。  飽きれば終わると思っていたのに、そんな気配はまるでない。

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