212 / 338

9

 ――わかんない……どうして?  一つ一つボタンを外す長い指先を見下ろしながら、とうとう遥人の眦からは涙が一滴零れ落ちた。 「遥人は嘘つきだ。身体はこんなに悦んでるのに」  ボタンを全て外した玲が、シャツの袷を左右へ開いて告げてくる。胸元へと手のひらが触れ、遥人は身体をビクつかせた。 「ここ、また引っ込んじゃったな」 「んぅっ」  淡い色をした小さな乳輪を指で摘み、ゆるゆると揉んでくるものだから、身体を捩って逃げようとすれば今度は腿を叩かれた。  もともと、丈の長いシャツ一枚しか着ることを許されておらず、前を開かれてしまった今は、ほとんど全裸と変わらないような格好だ。 「ちょっと酷くされたほうが、遥人は感じるんだよな。ほら……」  ペニスの先を指でつつかれ遥人が視線をそちらへ向けると、どういう訳か意志とは裏腹にそこは勃ちあがっていた。 「見られて、打たれて、普通なら……勃たない」 「んぅっ……」    “違うのだ”と言いたいけれど、声は封じられていて、おまけに今の状況は……遥人の意志を見事に裏切ってしまっている。  どうして嫌だと思っているのに、身体は興奮しているのか? 理由が全く分からないから、遥人は酷く混乱した。 

ともだちにシェアしよう!