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「じゃあ、また大学で」
笑みを浮かべて片手を上げる真鍋に向かって頷くと、彼はそのまま背中を向けて雑踏の中へ姿を消した。
「なかなか興味深い話だったろ」
「まあな」
すぐ脇に立った忍が肩へと手を置きながら告げてくる。
話を済ませてカフェを出た時、時刻は既に夜の八時を回っていた。真鍋が合流したのが七時頃だったから、ちょうど一時間話をしていたことになる。
「さーて、どうしようか」
「考えるのはお前の仕事だろ」
「冷たいな。でも、なんだかんだ言っても、俺の味方になってくれるって知ってるから」
「そんなこと……」
駅へと向かって歩きながら、そんな会話を交わしていたが、忍の携帯に着信が入り大雅は言葉を飲み込んだ。
「ん? ああ。いいよ……じゃあ、いつものところで」
隣で交わされる会話の中味は聞かなくてももう分かっている。おおかたセフレのなかの一人から誘われでもしているのだろう。
「そういうことだから、あとで連絡する」
「ああ」
電話を切った忍に言われる台詞もいつもと同じだから、大雅もいつも通りに返し、彼の背中を見送った。
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