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 ――誰もがみんな、報われることを望んでる。  その為には、どう動くのが正解なのか? これまで散々考えたけれど、結局自分の大切なものを優先するしか道はない。  結論はもう出ているのだから、いまさら善良ぶる必要など少しもありはしないのに、それでも胸の奥がざわついて、大雅は掌を握りしめた。  気を紛らわせようとテレビをつけ、ぼんやり画面を眺めていると、少ししてからドアの開く音がすぐ背後から聞こえてくる。 「さっきぶり」 「早かったな」 「あんまり気乗りしなかった」  合い鍵を持っている人間は、遥人がいなくなった今……忍だけになっているから、振り返りもせず大雅が言うと、「妬いてるのか?」と囁きながら掌を肩へ乗せてきた。   「別に、慣れてる」  喉仏へと触れる指先を振り払うこともしないまま、抑揚もなく大雅が答えれば、 「つれないな」 喉で小さく笑った忍に顎を捉われ振り向かされる。 「……」 「でも、そんなところが可愛いよ」  屈んだ忍の薄い唇がすぐ目の前へと迫ってきたから、無言のまま瞼を閉じて彼の戯れを受け入れた。  忍と大雅は異母兄弟で、二人の父親は堀田荘司という人物だ。  戸籍上、堀田の子供は忍だけで、大雅の父は相良という名のヤクザだが、さまざまな意図が絡んだ結果、料亭を経営している宮本の養子におさまった。    半分血の繋がった兄へと、最初に抱いた感情が、どんな形の愛だったのかは幼すぎたため覚えていない。  だが、それが恋慕の情であることを自覚した瞬間だけは、はっきりと覚えていた。

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