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あれは、高校二年生の春。
呼ばれて訪れた堀田の別宅で目にしてしまった彼の情事は、たちまちのうちに大雅の身体を欲情によって昂らせた。
時間を間違えて告げてしまったと忍は言い訳をしていたが、全ては彼の計算だったに違いない。
きっと、大雅自身も気づいていない感情に、忍はとっくに気づいていたのだ。
だから、わざと大雅を呼び出した上、大雅とは似ても似つかぬ華奢な男を組み敷く姿を見せた。
白い肢体を朱い縄によって雁字搦めにされた男は、穿たれるたびに嬌声を上げ、恍惚とした表情をして、甘えた声音で『もっと』と何度も強請っていた。
服も乱さず涼やかな顔で男を犯していた忍だが、その目尻だけが薄紅色に染まっているのが艶美に見え……その時になって自分が彼をどうしたいのか、大雅はようやく自覚した。
「つまらないな」
深く考えに耽っていると、飽きたように離れた忍がため息をついて告げてくる。
「からかわれるのは嫌いだ」
自分の気持ちを知った上で、戯れにキスをしてくる忍に最初は動揺したけれど、こう毎回繰り返されれば、大雅にしても耐性がつくというものだ。
「まずソノを取り戻す。あとはそれから考えようか」
「……わかった。場所について心当たりはあるのか?」
急に話を変えた忍へと、異論を唱えず返事をする。こういったやりとりは多いから、あえて彼の真意は問わない。
大雅には告げてこないだけで、忍の中ではきっとその先のことも考え済みなのだ。
「真鍋が探すだろう。それがアイツの仕事だ」
薄い笑みを浮かべる忍に大雅はひとつ頷くと、頬を撫でてきた彼の掌に唇を軽く押し当てた。
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