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――約束?
たゆたう意識の片隅へと、玲の言葉が引っかかり、遥人は意味を考えようとするけれど……うまく思考が働かない。
「……れい」
「なに?」
「玲はどうして……こんな、酷いことばかり、するんですか?」
「遥人はいつまでも敬語が抜けないな」
痛む喉から絞り出すようにした質問は、常の状態なら無駄だと思って口には決して出さないものだ。そして、それに答える彼の言葉は、やはり返事になっていなかった。
「……答えに……なってないと……思います」
この時、玲に対して遥人が反論できたのは、意識が混濁しているせいで、感情をうまく制御しきれなかったから。
それに対し、「仕方ないな」と呟いた玲は、困ったように眉根を寄せたが、怒ることもなく口を開く。
「したいからしてる。こんな風に思うのは、遥人にだけだ。遥人だって縛られたり、酷くされたりするのが好きだろ?」
「な……んで?」
意味が全く分からない。本当にそう思っているなら勘違いも甚だしいが、本気で言っているのだろうか?
「なんでって……どうしてしたいと思ったかってこと? なら、分からない。けど――」
遥人の問いに、玲がまともな返事をしたのは、初めてではないだろうか?
だから、たとえ理解は出来ないとしても、ちゃんと聞きたいと思うのに……遥人の気持ちを置き去りにして、意識は徐々に遠のいていく。
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