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「俺はどう処断されてもいい。もともと、唯人様が掬い上げてくれなければ、ここにいることもなかった」 「興味深い話だな」 「つまらない話です。そんなことより、どう遥人を連れ出すかを考えてほしい。その先のことは俺が考えます」    表情を一切崩すことなく、元の話題へと真鍋が話を戻す様子を横目で見ながら、大雅はとっくに冷めてしまったコーヒーを一口啜る。  真鍋が唯人の手駒であると知ったのは、この話を持ちかけられた半年前のことだった。  彼は、御園唯人の命令により、遥人のことを見守るために高校へと転入してきた。そして、遥人に近づきすぎることなく、その職務を遂行していた。  三年生になった遥人が玲と関わり合うまでは。 「約束は、ちゃんと守ってくれるんだろうな」 「御園遥人の身柄さえ確保できれば、約束は果たします。本来ならば、こちらの駒を動かさなければならないところですが、秘密裏に事を運ぶためには、俺の独断じゃ動かせない」 「ならいい」  念を押すように尋ねた忍は真鍋の返事に頷いてから、頬杖をついて資料を眺める。どうやら、頭の中では既に計画を描き始めているようだ。

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