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「約束ってなんだ?」
「内緒」
玲から遥人を引き離すことが、忍の目的なのだと思っていただけに、取引めいた二人のやりとりを大雅は疑問に思うけれど、自分に話す気が無いのならば深く詮索したりはしない。
――こんな時、知っていい事なんてない。
「念のため、宮本君も連絡先を交換しましょう」
「ああ」
これまで忍が窓口だったが、円滑に事を進めるためには、真鍋と直接やりとりをする必要性もでてくるだろう。
結果、このやりとりが大雅の未来を大きく変えてしまうことになるが、当然ながら今の時点でそれは全く分からなかった。
***
「遥人、朝」
「ん……うぅ」
耳に心地よい低めの声。
額と頬とに何度かキスを落とされて夢から醒めた遥人は、重たい瞼をゆっくりと、少しづつ開いていく。
すると、いつもと同じ美しい顔が視界一杯に映り込み、背中へ回った逞しい腕に上半身を起こされた。
「おはよう」
「……はよう」
この部屋で、彼と一緒に暮らし初めて随分と時が経っているのに、向けられる彼の綺麗な笑みに遥人が慣れることはない。
「遥人」
「……っ」
名を呼ばれ、条件反射で彼の頬へとキスをしながら、顔へと熱が集まってくるのを感じて遥人は目を伏せた。
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