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「今日はどこへ行こうか」  そんな反応を愉しむように、喉を鳴らして笑った玲が耳許へ甘く囁いてくる。      ここで暮らしはじめてほぼ半年。  最初のうちは、酷い仕打ちに泣き叫び、逃げ出そうとばかりしていた。だけど、今は――。 「桜が……見たい」 「桜? んー、まだ早いかな」  玲とこうして普通の会話が交わせるようになっている。  どうしてなのかと問われれば、遥人には首を傾げることしか出来ないが、第三者の目で観察すれば、巧妙に飴と鞭を使い分け植え付けられた結果であると分かるはずだ。  だけど、遥人にそんな意識は無い。  連れてこられた当初のように、密室の中で折檻ばかりされていたならば、きっと気がふれてしまっただろう。だけど、今の遥人は痩せてはいるが、健康的には問題の無い範囲に見えた。 「とりあえず、着替えよう」 「うん」  昨夜も散々抱かれた身体は鉛のように重たいけれど、遥人はゆっくり足を動かしてベッドの上から絨毯へ降りる。  外へ連れ出して貰える機会はそうそうやってこないから、渡された服へ着替えながら、素直に嬉しいと感じていた。

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