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 ――なんでだろう?    玲がそばにいないだけで、心がザワザワと落ち着かなくなる。  セックスの時は苦痛を与えられたりもするが、ただ苦しいだけかといえば、頷けない自分がいた。 「いつもみたいにじっとしてて」 「……はい」  触れるだけのキスを落とした玲の言葉に頷くと、静かな部屋にインターフォンの澄んだ音が鳴り響く。  今は視界を奪われているが、過去数回の経験により、どんな風に自分が外へと出されるのかは分かっていた。  クリーニング業者を装った使用人のカートへ乗せられ、業務用のワゴン車を使い途中までは移動する。それから、春日の車へ乗り換えて、先に乗っている玲と一緒に目的地へと移動するのだ。 「遥人は、なんで毎回こうするのか、不思議に思わない?」  ワゴン車での移動が終わり、玲の手によってカートの中から抱き上げられたその途端、急に質問をぶつけられたが、今は疑問より安堵の気持ちが大きいから、首を左右へと小さく振った。

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