233 / 338
30
――なんでだろう?
玲がそばにいないだけで、心がザワザワと落ち着かなくなる。
セックスの時は苦痛を与えられたりもするが、ただ苦しいだけかといえば、頷けない自分がいた。
「いつもみたいにじっとしてて」
「……はい」
触れるだけのキスを落とした玲の言葉に頷くと、静かな部屋にインターフォンの澄んだ音が鳴り響く。
今は視界を奪われているが、過去数回の経験により、どんな風に自分が外へと出されるのかは分かっていた。
クリーニング業者を装った使用人のカートへ乗せられ、業務用のワゴン車を使い途中までは移動する。それから、春日の車へ乗り換えて、先に乗っている玲と一緒に目的地へと移動するのだ。
「遥人は、なんで毎回こうするのか、不思議に思わない?」
ワゴン車での移動が終わり、玲の手によってカートの中から抱き上げられたその途端、急に質問をぶつけられたが、今は疑問より安堵の気持ちが大きいから、首を左右へと小さく振った。
ともだちにシェアしよう!