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*** 『遥人には夢ってある?』  殺風景な白い部屋。全ての窓が磨り硝子だから、外の景色はまるで見えない。  ――いつもの部屋だ。  ここは、遥人が玲と暮らすマンションの寝室にあるベッドの上。すぐ傍らにはこちらを見つめる玲の綺麗な顔がある。  いつもと同じ微笑を浮かべる玲の表情に安堵しながら、悪い白昼夢を見ていたのかもしれないなどと考えていると、 『どうした?』 いぶかしむような声が聞こえ、素肌へと長い指先が触れた。 『夢?』 『そう、将来の夢』  ――なんだろう?    この時胸へとチリリと芽生えた小さくはない違和感に、遥人は首を傾ける。  このやりとりを彼とするのは、今日が初めてではない気がした。 『夢は……』  それでも、答えなければ機嫌を損ねてしまうから、遥人は返事をしようとする。  以前、同じ質問を受けたとき、自分はなんと答えただろう?    ――俺は……俺の夢は……。

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