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『もっと寝る?』 『大丈夫……です』  互いに裸で横たわっている状況から推測すると、どうやら自分は行為の途中で眠ってしまったようなのだが、目の前にいる玲の表情に怒りの色は浮かんでいない。  ――怒ってない?  奇妙な事態に動揺しながら遥人は玲へと手を伸ばし、その背中へと腕を回した。  常なら絶対に出来ないことだが、どういう訳か? 抱きしめたくてたまらない衝動に駆られたのだ。 『可愛いこと……するようになったな』    穏やかに笑う玲の表情に僅かな違和感を覚えながらも、『ずっとこうならいいのに』などと遥人はぼんやり考える。  彼は、暇さえあれば遥人を抱き、ほんの少しでも反抗的な態度をとれば、躊躇いもなく弱い部分を掌や鞭で打ち据えた。  けれど、遥人が従順に命令を聞けば、すごく優しくしてくれる。  ――そうだ。玲は……優しい。  どちらにしても、縛られたり、道具を使って責めれたりはするのだけれど、それでも……怒っていない時の彼は、触れかたが優しくなったと感じる場面が多くなった。  最近では、その手に縄を掛けられただけで、体の芯が疼きはじめてしまうほどに――。  ――俺は……玲が……。

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