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「これからの予定だけど、遥人君のリハビリは長期化しそうだ。だから、落ち着いたら、念のために離れた場所にある病院へ転院させる」
「それって……」
「そっちも俺と繋がりがある病院だから大丈夫」
柔和な笑みを浮かべた長瀬はそこまで話すと立ち上がり、「そういう訳だ。二人とも……特に宮本君は、転院するまで病院には顔を出すな。バレたらまずい」と告げてくる。
「でも、俺は……」
「早く謝って楽になりたい気持ちは分かる。だが、全ては遥人君が落ち着いてからだ」
「……はい」
優しそうな顔をしているが、的確に、痛い場所ばかりを突いてくる彼に、それ以上なにも言えなくなった。
こんな時、自分はまだまだ子供なのだと思い知る。
「計画を立てた俺の責任……って言っても、きっと宮本君は納得しないでしょう。でも、これだけ言わせてください。悔やんでる暇はありません。これから……です」
立ち去る長瀬の背中を見つめ、奥歯を噛みしめた大雅の耳へと、淡々とした真鍋の声が滑るように入り込む。
そんなことは分かっていた。
だが、いざ音になって鼓膜へ響くと、悶々とした心の闇が、少しだけ解れたような気がする。
「そうだな」
弱々しい光を放つ街頭をふいに見上げた大雅は、真鍋の声に返事をしつつ、自分の犯してしまった罪を償う覚悟を密かに決めた。
第五章 おわり
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