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今でも多少引きずる形になってしまった左の脚は、ごく希に、不自由であると感じることもあるけれど、当時の怪我の状況を思えば、歩けるだけでもありがたい。
この怪我を含めさまざまな事が重なった結果、大学へは通えなくなってしまったが、今、こうして自立できている現状が、遥人にとっては幸せだった。
――いろんな人に、助けてもらってばかりだけど。
会社を出てから10分程度、ゆっくり歩みを進めたところで、スーパーや薬局などが建ち並ぶ場所へと到着する。
夕刻という時間柄、混雑している駐車場を迂回するように進んでいくと、入り口付近に良く知っている人物の姿が見えてきた。
「お疲れ」
「た、大雅君」
「行くぞ」
遥人の姿を見つけた彼は、足早に傍まで近づいてくると、奪うように荷物を取り上げて駐車場へと歩きだす。
「あの、大雅君、今日は……」
「買い物には明日つき合う。その辺で飯食って帰ろう」
怒っている訳ではないと経験上分かっているが、威圧感のある低い声音に、遥人は言葉を途中で飲み込む。そして、促されるまま彼の車の助手席へと乗車した。
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