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「シャワー先に使ってください。ビール、冷蔵庫に入れておきます」
「ああ」
コンビニで買ったビールの缶を手にした遥人が声をかけると、頷いた大雅は、着替えを手にしてバスルームへと姿を消した。
遥人自身は酒を飲まないが、いつ大雅が訪ねて来ても、すぐに出せるようにと考え、冷蔵庫には数本のビールが常に用意されている。それらを手前に移動させ、新しいビールを奥にしまうと、遥人は軽く伸びをしてから室内へと移動した。
遥人が住むこのアパートは、2DKの間取りになっており、新築してからまだ数年しか経っていない。
一部屋あれば十分だろうと遥人は考えていたのだが、伝えようと思った時には長瀬が契約を済ませていた。
田舎だからか家賃は安く、だからこそ、派遣の遥人の収入だけでも十分な暮らしができている。
――本当に、夢みたいだ。
リビングとして使用しているフローリングの六畳間には、淡いブラウンのラグが敷いてあり、他には小さなテーブルと、座布団代わりのビーズクッション2つだけしか置いていなかった。
そのクッションのひとつへと座り、瞼を閉じた遥人の耳に、大雅の使うシャワーの音が小さくだけれど聞こえてくる。
――静かだ。
テレビも無く、本棚代わりのカラーボックスは寝室のほうに置いてあるから、物がないと言われてしまうのも仕方のない話だった。
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