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「手、汚してごめんなさい。今、拭くから……」
「別にいい。そのことで謝ったなら、俺が勝手にやったことだ」
立ち上がろうとした遥人の動きを片手を上げて制した大雅が、「ちょっと待ってろ」と言い残してから洗面所へと姿を消した。
――どうしよう。
続いて聞こえてきた水音に、遥人はようやく我へとかえり、露出している下半身へと視線を落として唇を噛む。
これまで何度か大雅が部屋へと泊まったことはあったけれど、こんな事態は初めてだから、どうすればいいか分からなかった。
――隠さないと……。
大雅が戻ってくる前に、下げられたズボンを上げようとするが、指がガタガタと震えてしまってなかなかうまく動かない。
――はやく、はやくしないと。
情けない体を叱咤しながら、遥人は腰を浮かせるけれど、今度はバランスをフラリと崩して敷かれたラグへ倒れ込んだ。
「大丈夫か?」
「……めんなさい。ごめ……」
いつのまに戻ってきたのか? すぐ背後から聞こえた声に、反射的に体を丸めた遥人は小さく謝罪を紡ぐ。なにひとつ、まともに出来ない自分のことが、情けなくてたまらなかった。
「なにも考えなくていい。少しの間じっとしてろ」
遥人の動揺を察したように、背中を撫でさする大きな掌。いつになく優しい大雅の声音に遥人がコクリと頷いたのは、そうする以外の選択肢がまるで浮かばなかったから。
「っ!」
「動くな」
容易く体を仰向けにされ、下半身へと引っかかっていたズボンと下着を取り払われても、嗚咽を漏らし、震えることしかできないのは……これまで散々心と体に教え込まれたからだろう。
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