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 大雅がなぜ、ここまで自分を気にかけるのかは想像がついている。だからこそ、こんなことまでさせてしまっては申し訳ないと遥人は思った。  自分に怪我をさせたことへの贖罪ならば、そんなのとっくに済んでいる。  それに――。 「大雅君は、俺が好きなわけじゃない。それだけは分かるから……罪滅ぼしのつもりなら、俺はもう大丈夫。玲のことは……自分で乗り越えないと、意味がない」  情けなく声は震えたけれど、大雅にはきちんと聞こえたようで、ようやく遥人の左の脚は彼の肩から下ろされた。  けれど、ホッとしたのも束の間で、股間を隠す遥人の手首は、彼の掌にやや乱暴に掴まれる。 「あの、手を……」  続くはずだった『離して欲しい』という台詞は、紡ぐことができなかった。  なぜなら、覆い被さってきた大雅が、遥人の手首を床へと縫いつけ、喉元に顔を埋めてきたから。 「お前のことは好きだ。ただ、お前が言うように、俺にはずっと、長い間、想ってる相手がいる。けど、この想いは叶わないし、叶っては駄目なことだと知ってる」    ややぐぐもった低い声。  思いがけない告白に、遥人は瞳を見開くが、初めて大雅が吐露した本音を聞き逃さぬよう、意識を耳へと傾けた。

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