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三年前、玲の車へと乗り込もうとした遥人を助けてくれた時、大雅が投げた爆薬の威力は想定よりも大きなもので、さらには予定していた場所より遥人の近くへ転がったらしい。
遥人の左脚には消えない傷が残ってしまったが、それについて大雅を恨む気持ちになりはしなかった。それよりも……自分を案じて危険を冒した彼の気持ちが嬉しかったのだ。
それから、いろいろな人に支えられ、働き始めた遥人だったが、自分で稼いで生活するうち、自惚れなのかもしれないけれど、少しは成長できたと思う。
「俺は、行かない」
だから、大雅の気持ちは嬉しいけれど、遥人ははっきりと否を口にした。
相手の顔色を伺うばかりが優しさじゃないと分かったから。それは、リハビリ期間や職場の中で少しずつ学んだことであり、誰かが直接声にだして教えてくれたことじゃない。
ただ、周りの人々と徐々に関わりを繋いでいくその中で、どうせ伝わらないだろうと、あえてそうしていた面もあるが、伝える努力を怠っていたことに遥人は気がついた。
「何故? ここにいたら、いつか捕まる」
「大雅君の気持ちは嬉しい。だけど、俺はもう学生じゃない。今働いている職場にもようやく慣れてきたし、今は、働くのがすごく楽しいんだ。もし、祖父に捕まっても、自分でなんとかできると思うから、だから……大丈夫」
本当はすごく怖かった。
捕まったら、最悪の場合殺されるかもしれないなどと考えれば、自然と声は震えてしまうが、遥人は懸命に口角を上げ、大雅に笑みを浮かべて見せる。
これ以上、負い目を抱いて欲しくはないし、遥人自身、逃げることに意味があるとは思えなくなっていた。
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