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「嘘。知ってるよ」
何を知っているのかなんて、尋ねられるほど鈍感にはなれなかった。
憂いを帯びた玲の表情に息を飲み、紡ぐつもりだった拒絶の言葉を声にすることができなくなる。
この時、遥人の心にわき出したのは強い既視感。玲のこんな表情を、遥人は前にも見たことがあった。
――そうだ、あれは……。
玲との会話が初めて成立したと思った夜のこと。どうして酷いことをするのかと尋ねた遥人に返事をした時、玲が浮かべていた表情も今と同じものだった。
「俺は、遥人が生きてるって分かるまで、生きた心地がしなかった。遥人は……そんなに俺のことが嫌い?」
「俺は……」
そんなの嫌いに決まっている。それだけのことをされてきた。今、それを伝えなければ、遥人も玲も先へは進めない。
――だけど……。
それを言えなかったのは、思考とは別の感情が……胸をじわじわと満たしたから。
こちらを見つめる玲の瞳に、喉の奥が詰まるような感覚に陥って、心臓の音は速くなり、息をするのも苦しくなった。
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