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「……っ!」 「遥人は馬鹿だ。あの頃から全然変わってない」    床へと打ち付けられた衝撃に小さく呻いた遥人の腕を、強い力で掴んだ玲はベッドの方へと歩き出す。 「いたいっ、玲、離して」  結果、引きずられる格好となった遥人は声を上げるけれど、無視された上に担ぎあげられ、ベッドへと放り投げられた。 「……うぅっ」 「話す前に、遥人を確かめさせて」  ここまで手荒なことをした癖に、耳元で低く囁く声は、蕩けるような甘さを帯びているから背筋が冷たくなる。  これでは過去の二の舞だ。変わらないのは自分ではなく玲の方だ……と、ここで遥人はようやく悟った。 「……先に、話をしたい」 「そう。なら、遥人は話していいよ」 「違う、そうじゃなくて……っ!」  うつ伏せにされた遥人の背中へ玲が膝を乗せてくる。這ってそこから逃げようとすると、手首を掴まれ背後へと捻り上げられた。 「く……い、痛いっ」 「ネクタイのセンスも悪い」 「止めろ……玲!」 「ほら、話せよ。聞いているから」  遥人の襟からネクタイを引き抜いた玲が、それを使って遥人の手首を背後で縛り上げている間、何度も止めろと叫んだけれど、止まってくれるはずもなく――。 「玲、俺は……逃げたんだ。だから……解いて、ここから帰して欲しい」 「知ってる。それで?」  必死に紡いだ遥人の言葉は玲の一言で切り捨てられた。そればかりか、背後から腰を抱き寄せられ、ベルトの留め具が外される。    「もう……こういうのは、嫌なんだ。玲はどうして、こんなことをするの? 俺は、玲の……なに?」  過去、『どうしてこんなに酷いことをするのか?』と、尋たことはあるけれど、その返答はあやふやなもので遥人には意味が分からなかった。  どんな理由があるにせよ、許される類のことではないが、それでも遥人は彼へ問わずにはいられない。

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