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「……なんとなく」 「なにそれ。遥人はやっぱりバカだな」  喉で笑う玲の声音は、遥人が意識を失う前より落ち着きを取り戻しているように感じられた。  三年前、遥人が玲から引き離される直前は、二人の間に同じような空気が流れていた気がする。 「俺は、別に遥人を守ってない。最初に声をかけたのは、反応を見て遊ぼうと思ったから。遥人が俺のこと嫌いなのは知ってたし、遥人に友達がいないのも知ってたから、遊んでも口外できないと思った。ちょっと遊んだら解放しようと思ってたけど、遥人の泣き顔見て気が変わった。俺だけのにして、もっと泣かせたいって思った」  淡々と紡がれる言葉に遥人が息を飲んだのは、彼が唐突に自身の本音を語り始めたからに他ならない。  “遊び”という玲の言葉に胸が締め付けられるけど、今は黙って彼の話へ耳を傾けることにした。 「遥人を壊したかったわけじゃない。けど、感情が上手くコントロール出来なくなった。忍が大雅を使って邪魔をし始めたのはその辺りからだ」  そこまで話すと玲は遥人の頬へ指先で触れてきて、「ただ事実を話してるだけだから、それについて言い訳をするつもりはない」と告げてくる。

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