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「高三の最後、遥人の兄さんがうちの父親を陥れた時は、やられたって思った。真鍋が御園唯人の手駒だったことは、その直前まで知らなかったし、爺さんは手のひらを返して大雅にお前の所有権譲るし、だったら……いったい俺は何のために、ジジイに宛がわれた女を抱いてたんだって話だ」
「え?」
感情が昂ったのか? 独白のように話す声音が最後のほうで僅かに揺れた。
「大雅は父親のヤクザから、遥人が男にヤられてる映像を撮るように命じられてた筈だけど、結局……忍を騙して三年も遥人を匿ったってことは、遥人に本気になったんだろ」
「……玲」
思いもよらない方へと進んだ玲の話を理解しきれず、名前を呼んで止めようとするが、構わずに彼は話し続ける。
「守ろうなんて思ってなかった。ただ、欲しかった。それは今も変わらない。遥人の意志なんて関係ない。だって、約束した……俺がずっと一緒にいるって……」
「玲」
遥人が思わず腕を伸ばして彼を抱きしめてしまったのは……計算ではなく体が勝手に動いてしまった結果だった。
『遥人の意志など関係ない』と言いながら、心の内を吐露した玲に、その理由を尋ねようとは思わない。
きっと今、表面にこそ出してはいないが、自分と同様彼もかなり混乱している。
離れていた三年間、このまま忘れてしまえるのなら、それが一番と思っていた。それなのに、この状況で思い出されるのは、愛おしげに自分の名を呼ぶ甘い声音と、寸断無く愉悦を与える彼の指の感触だ。
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