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「や、やめ……話、話を……」
「痛いのは嫌なんだろ? なら優しくする」
長いキスが終わった直後、息を必死の整えながら遥人は玲へと告げるけれど、笑みを浮かべて自分を見下ろす彼には届いていないようだ。
いつのまにか纏っていたシーツは全て引き剥がされ、ベッドの上、仰向けになった遥人へと、玲が覆い被さるような格好になっている。
「足りない。何回抱いても……足りない」
淡々と紡ぐ言葉の端から僅かに滲む悲壮な感情。それを読みとった遥人の心は絞られるような痛みを覚えた。
「玲、俺にも……意志はある。だから、関係ないとか……言わないで。玲を忘れたことはない。もう忘れたいって何回も思ったけど、忘れられなかった。玲は……自分がどれだけ酷いことしたか分かってるから、だから、俺と話をすることから逃げてる」
相変わらず声は掠れ、弱々しいものになったが、遥人は玲の瞳を見つめて懸命に訴える。
謝罪を求めている訳ではなく、彼に分かって欲しかった。
遥人にだって意思がある。
ささやかだけれど夢もある。
三年前は諦めて、ただ流されるだけだった。声を上げても助けなんて来ないと諦めきっていたし、早く時が流れればいいと日々祈っていたように思う。
けれど、ようやく自分が夢に見てきた普通を手にしてから三年、遥人の中でいろいろなことが時と共に変わっていった。
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