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 ここは高級住宅街で、春日が立つ背後に見える邸宅は、高い壁が四方を覆い、駐車スペースへ続くシャッターと門扉は堅く閉ざされている。こんな場所にも今泉の持つ物件があると知らなかったから、仮にもし、春日がスマホの電源を切ってしまっていたなら、遥人を探し出すのに時間がかかってしまったことだろう。 「呼び出したつもりはありません。電話でお話した通り、玲様には明日の夜まで二人にすると約束しました。経緯を伝えたのは、貴方が御園遥人を探す時間と手間を軽減するためです。彼はここにいる。約束通り解放しますので、迎えにくるなら明日の夜にしてください」  そう淡々と話す姿は三年前と変わらない。表情筋が無いんじゃないか? と心の中で毒吐きながら、大雅は一歩前へと踏みだし至近距離へと詰め寄った。 「理由は? 一度は逃がすのに協力した筈だ。なのに、どうしてまた二人を会わせた」  明日の夜まで待っていろなんて要求に、素直に従う義理もない。今見えている相手は春日一人だが、大雅が力に訴えてみてもここを通しはしないだろうし、周到な彼が何の配備もしていないはずはないだろう。  とりあえず、どう動くかを考える前に、どうしてこんなことになったのか尋ねなければ気が済まなかった。 「あの時は、二人を離すのが未成年の玲様の為と判断しました。今、玲様は既に成人し、名実共に今泉家の跡取りとなりました。ならば、(あるじ)の命令に従うのは当然のことでしょう」  事務的過ぎるその物言いに、なにかが強く引っかかる。

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