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「……了解」  忍へとそう答えた刹那、喉で笑う声が響いて背筋を冷たいものが走る。  それから、少し離れた駐車場へと停車させてある車まで、二人で一緒に歩く間、どちらも言葉を発しなかった。  忍と会うのは三年ぶりだ。  違う大学へ通っていたから、大雅が住処と携帯を変えれば接点はまるでなくなった。  きっと、忍が本気で会おうとすれば、すぐに見つかっていただろうが、プライドの高い彼が探さないことは予想できていた。  ――なんで今更。    車の鍵を開けた大雅は助手席側へと回り込み、ドアを開いて忍を乗せてから、自分は運転席へと乗り込む。  邪魔な遥人が消えたのだ。この三年は忍にとって、玲を手に入れる好機だったはずなのに、こんな事態になったということは上手くいかなかったのだろうか?    ――まあ、そうだろうな。 「まず、俺を仲間外れにしたことを謝るべきだ」  車を発進させた大雅へと忍が話しかけてくる。「すまない」と一言返せば、「ホント、お前は可愛げがない」と抑揚もなく忍は言った。 「どこへ行くつもり? 俺、スタバが飲みたいんだけど」 「わかった」  行き先は既に決めてあるけれどそれについては答えずに、まずは忍が行きたいというコーヒーショップへ向かうことにする。  再度訪れた沈黙の中で車線をスムーズに変更しながら、大雅は忍の思惑を……推測しようとして止めた。  考えなくてもいづれは分かる。それに、今の自分は忍の思い通りに動く駒ではないから、以前のように先回りして気を利かせる必要もない。 「いつもの。大雅が買ってきて」    郊外にあるコーヒーショップの駐車場に車を停めると、三年前と変わらぬ所作で忍がカードを差し出した。それを受け取った大雅は一人で店内に入りコーヒーを買う。  そして……大雅は忍の飲み物の中に、隠し持っていた睡眠薬を迷うことなく混入させた。 第六章 終わり

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