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「あの時、一緒に遊んでたのは忍って話になってて、長い間、俺もそれを疑ったりしなかった。ただ、柘榴の木を眺めると、胸が苦しくてどうしようもなく不安になった。その理由を思い出した時――」  そこまで話を進めたところで、玲はいったん言葉を止める。思惑があってのことではない。腕の中にいる遥人の体が細かく震えだしたからだ。 「遥人?」  泣いているのだと気付いた玲は少なからず動揺した。これまで散々泣かせてきたのに、おかしな感情だと思う。けれど、いろいろなことを話すうち、玲の心中で確かに何かが少しずつ変わりはじめていた。 「……して、どうしてそれを、早く言ってくれなかった」 「それを言ったら何かが変わった? もう力づくで手に入れるしかないだろ。それ以外どうしたら、俺を嫌ってる遥人が俺のものになる?」  人心掌握する術は、幼い頃から身につけていたが、それでも玲には一定数自分を嫌う人間がいた。それは、生きていく中で当たり前のことだというのも知っている。万人から好意を寄せられる人間なんていやしない。  そんなことは分かっていたから、自分を嫌う相手とは距離を置いていた。誰もがやっていることだ。  けれど、自分を嫌う相手のことを好きになってしまったら?

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