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「欲しいものは、どんな手段を使っても手に入れる。簡単な理屈だ」  諦めるという選択肢は玲の中に存在しない。  傲慢なのは百も承知だ。大抵のものは望まなくても既に持っていた玲にとって、初めて欲しいと思った相手が遥人だった。だから、邪魔なものを排除して、自分だけしか頼れないようにしようとした。  なのに、遥人は何度も玲の腕から逃げ出した。 「玲は……思い通りにならない玩具に癇癪をおこしてるだけだ。だって、玲は……俺の何を知ってる? 俺を好きだって言うけど、理由がまったく分からない。俺も柘榴のこと……覚えてた。相手が玲だったことは忘れてたけど、心配してたから、後遺症もなくてよかったと思う」  関係のない二つの話題を紡ぐ遥人はかなり混乱しているようで、そこまで話すとしゃくりあげながら小さな声で「帰る」と呟き、玲の腕から逃れようとする。 「遥人が好きだ」  弱々しく足掻く体を背後から強く抱きしめて、耳元へ低く囁きかけると、ビクリと体を震わせた彼は小さく首を横へと振った。  振り返らせてキスをしたいという衝動がわき起こるが、玲は懸命にその感情を自身の内へと押し込める。  泣いている顔を見てしまったら、自身を抑えきれなくなるのは、経験上分かっていたから。  これまでも、遥人の泣き顔を見るたびに、理性を抑え切ることができず欲情のままに貪った。そうすれば、遥人は必ず玲の気持ちに応えてくれたが、それが彼の本心ではないことくらい分かっている。 ――理由ってなんだ? 今更、それを言って何になる。 「……もういいや」  自分でも驚くくらいに抑揚の無い乾いた声が出た。

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