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「消えたいって思ってるのに、実行する度胸もなかった。だから、誰にも迷惑かけないで、生きていけるようになれば……俺の存在は、許されるんじゃないかって……」
これまで、心の奥へと閉じこめていた膨大な感情が、堰を切ったように次々と溢れ出してしまった理由は、遥人がようやく自分自身を省みたからに他ならない。
「俺は……俺を玲から救ってくれた人たちのために、自立しないといけないって思ってる。玲とは離れないといけないって思う。そうしないとみんなを裏切ることになる。でも……」
高校時代、玲の興味を引いてしまったあの時から、逃げ出したいと思いながらも、捕らわれるたびに心のどこかで安堵している自分がいた。
そのことに、遥人がようやく気が付いたのは、一人暮らしを始めてからだが、玲や忍にはとっくの昔に見抜かれていたのかもしれない。
過去に何度も『遥人は縛られて罰を受けるのが好き』なのだと言われたが、当時の遥人はそんな筈があるわけがないと反発していた。
けれど、今なら分かる。玲のしたことが正しいなんて思わないが、全てを彼のせいにして……いつの間にか、与えられる罰への依存を深めていた。
『で、遥人自身はどうしたいの?』
「俺は……」
喉に言葉が引っかかる。
繰り返すことになってしまうが、どうするべきかを考えるあまり、どうしたいのかを考えたことが遥人にはあまり無かったから。
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