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「はじめまして」
「ようやく会えたな」
玲と再会した5月からあっという間に月日は流れ、せわしなく日々を過ごしているうち9月も半ばになっている。
今日、遥人が赴いたのは都内に建つマンションで、この部屋に入る直前までは真鍋が一緒にいてくれたのだが、『俺はここまで。緊張しなくて大丈夫だから』と微笑んだ彼に背中を押され、意を決して中へと入った。
「どうぞ」
広いリビングルームのソファーから立ち上がったこの部屋の主は、優雅な足取りで遥人に近寄り右の掌をこちらへ向ける。
「これ、おみやげです」
ぎこちない動作で握手を交わし、紙袋を差し出せば、クスリと喉で笑った彼はそれを受け取り「ありがう。座って」と、遥人をソファーへ促した。
「あの……俺、いろいろ迷惑をかけてしまって、本当に……ごめんなさい」
まず最初に、謝罪をしなければならないと思っていたから、遥人は腰を下ろす前に目の前の男へ頭を下げる。
彼、御園唯人は遥人の血縁上での兄に当たるが、対面するのは初めてだから、緊張のあまり声は震え、情けないほどに小さくなった。
「遥人が謝る必要はない。俺の力が及ばなかったせいで辛い思いをさせたと思ってる」
もう一度、座るようにと促され……遥人は浅く腰を下ろす。そして、テーブルを挟んだ向こうに座る兄の姿を見て、綺麗な顔をしているなどと、この場面にふさわしくない感想を抱いてしまった。
ここに来るまで、謝罪と御園の名を捨てることを伝える事だけ考えていたが、いざこうして顔を合わせると、言いようのない感慨が胸の奥の方から湧いてくる。
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