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「だけど、俺個人としては、遥人には……できれば御園でいて欲しい。遥人の存在が明るみになったからといって、揺らぐようなものは無いから、もし理由が俺への気遣いだけなら考え直して欲しい」 「あ、あの……」 「強要をするつもりはない。けど、遥人にはできる限りのことをしたい。大学からやり直してもいいし、もし事業に興味があるなら会社をひとつ任せてもいい。なにか欲しいものがあるなら言って欲しい。これまでずっと、なにもできなかった分、兄らしいことをしたい」  淡々とした口調の中に強い意思を感じた遥人は、返答に迷った挙げ句、言葉にできず頷いた。 「これは俺のエゴだ。遙人がそういうものを望まない性格なのは聞いている。ただ、俺がそうしたいだけ。まあ、どうするかは今後ゆっくり時間をかけて決めればいい。遥人も俺も……まだ、兄弟っていう関係に慣れてない」 「俺、俺は……兄弟って言ってもらえて……嬉しいです。今日は会うことができて、嬉しかった。いろいろ、本当にありがとうございます」  これまですごく悩んだけれど、今日、唯人に会えて良かったと心の底から遥人は思う。  この世で唯一血の繋がった人物に、外見では自分と似ている所を一つも見つけることができなかったが、それでも……気のせいかもしれないけれど、何かが確かに繋がっているような気がして、心がじわりと温かくなった。

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