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 御園唯人の指示で遥人を彼の元へと連れていき、どんなやりとりをしてきたのかを知りたかったから訊ねてみたが、自分の(あるじ)が"弟"という理由だけで、そんな提案をする人物では無いことを知っているだけに……話を聞いて驚いた。 「考えるって言ったけど、援助を受けるつもりは無いんだろ」 「……うん。言ってもらって嬉しかったけど、そこまでしてもらう理由がない」  困ったような笑みを浮かべた遥人を見て、勿体ないと真鍋は思う。  交流を再開してからまだ1ヶ月程度だが、能力はあるのに覇気が無いのは相変わらずといった印象だ。  それは、ずっと受け身でいるしかなかった彼の環境のせいなのかもしれない。 「そろそろ行かないと」 「アイツのとこ?」 「……うん、約束してるから」    「じゃあ駅まで一緒に行こう」  時計を見ると1時間ほどが経過して、針は2時を指していた。  答えづらそうに俯く遥人へ極力普通に声をかけ、「遥人が自分で決めたんだから、自信を持っていいと思う」と付け加えると、こちらを見上げた遥人は一瞬泣きそうに顔を歪めたあと、「ありがとう」と礼を言いながら照れたように微笑んだ。

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