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「今日はただ……家に泊めるだけで帰そうと思ってた。このマンションだって、遥人がいつでも逃げられるように、出て行く時のセキュリティーは掛けてない。けど、ずっとここに遥人を閉じ込めておきたいって思う自分もいる」  玲は慎重に言葉を選び、穏やかな口調で語りかける。  それは一重に遥人を怯えさせないためだ。  人間、そう簡単には変われない。  この数ヶ月、玲は遥人に対する時、理性を保つ努力をしていた。そうすることで遥人が傍にいてくれるのならば、それで良いと考えているが、いつ再び箍が外れるか分からない。  そんな心情を包み隠さずに遥人に告げた玲だけれど、「それでもいい」と返されたことで思考がピタリと止まってしまった。 「覚悟は出来てる。誰からも理解されなくても、玲と一緒にいたいと思う。でも、これからは……話をちゃんと聞いてほしいし、閉じこめないでほしい。俺の気持ちを信じて……ほしい」  目の前で……抑えきれずに涙を流した遥人の頬へと触れながら、自身の心にわだかまっていた膿が消えていくのを感じる。 「わかった。努力する」  なるべく怖がらせないように、言葉を紡いだつもりだが、うまく出来たかと問われれば、及第点には及ばないだろう。  泣きながら頷く遥人の目尻をそっと指先で拭った玲は、抑えきれない衝動によって遥人の体を抱き上げた。   *** 「んっ、ふ……うぅ」 「声、抑えなくていい」  あっという間の出来事だった。  気持ちをなんとか伝えた遥人は、玲に抱き上げられたあと、ベッドルームへそのまま運ばれ今は裸になっている。  乱暴でこそ無かったけれど、その行動の性急さには驚いたし、服を脱がされている間には、「自分で出来るから大丈夫」と告げ抵抗も試みた。  それでも「今日は俺にさせてほしい」と言われてしまえば、結局のところ否とは言えない。

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