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「最初から……やり直せたらいいのに」  喘ぐ遥人の唇へと、触れるだけのキスを落とした玲が小さく呟いた。  それはきっと遥人に向けての言葉ではなく、ただの独白なのだろうが……そんな考えを持つこと自体、当時の玲にはありえなかったことだろう。 「好き、遥人が好き……だから……」 「アッ、アウゥッ……れい……んぅっ」  手首を離した玲の両腕が遥人の体を強く抱きしめ、激しくなった律動ともに唇を深く塞がれた。歯列をザラリと舐め回され、呼吸が苦しくなった遥人は、玲の背中へと腕を伸ばして縋りつくように爪を立てる。 「んっ……んんぅっ」  そこから……玲の激しい律動によって何度もドライで達してしまった遥人だが、結局ブジーは抜いて貰えず、射精を伴わぬ絶頂の中で意識をプツリと闇に落とした。  ***  腕の中にいる遥人の体が一際(ひときわ)激しく痙攣したあと、くたりと力が抜けたところで、玲は自身がやり過ぎたことにようやく気づいて動きを止めた。 「遥人?」  体を離して頬へと触れるが反応は全くない。内心酷く焦りながらも脈と呼吸を確認し、小さく息を吐き出した玲は、遥人の臍の辺りを撫でながら、「愛してる」と呟いた。 「俺には遥人だけ……いればいい」  そのまま、猛ったペニスで遥人のアナルを何度か穿ち、その体内へと自身の精液を注ぎ込んでから、ゆっくりと引き抜いていく。 「うぅっ」  小さく呻いた遥人の下肢へと指で触れ、萎えてしまった小振りなペニスに挿さったままのブジーを引き抜けば、塞ぎ止めていた白濁が……尿道口からタラタラと溢れた。 「ホント、かわいい」  すでに成人を迎えた男に言う台詞では無いだろうが、それ以外には形容仕様がないのだから仕方ない。  以前であれば無理矢理起こしてセックスを続けていたし、そんな衝動がわいてこないのかと問われれば、否とは答えられないだろう。  けれど。 「時間は……ある」  遥人はもう逃げないのだから……と、自分自身に言い聞かせ、玲はシーツで遥人を包むと、その体をそっと抱き上げてバスルームへと姿を消した。 第七章 終わり

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