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epilogue
【エピローグ】
季節は春。
穏やかな日差しを受け、桜の舞う遊歩道をゆっくりと歩く遥人だが、その心中は穏やかなどとはとても言えないものだった。
「遥人、もしかして緊張してる?」
隣を歩く玲に問われて「してる」と小さく答えれば、触れてきた彼の手のひらが遥人の手をそっと掴んだ。
「玲、ここ……外だから」
「知ってる」
彼の性格はだいたい分かっているつもりだが、それでも時折思いもよらない行動にでることがある。今だって、振り払わない遥人の気質を理解した上でしているのだから、駆け引きできない遥人から見れば彼の方が一枚上手だ。
「いじわる」
触れられた場所が熱を持ち、僅かに体を震わせながら小さな声で遥人が告げると、「帰ろうか」の声が降りてきて遥人は何度も頷いた。
「桜は部屋から見ればいい」
そう耳元で低く囁かれれば、「んっ」と小さな声が漏れる。
そこから玲のマンションまでは五分ほどの距離だったけれど、どうにか部屋にたどり着き、玄関へと入った途端遥人は膝から崩れ落ちた。
「遥人、かわいい」
そんな遥人の体を抱き上げ玲が頬へとキスをする。
「玲、俺……やっぱりこういうのは……」
「嫌だった?」
リビングへと移動して、ソファーの上に下ろされた遥人が意を決して伝えると、困ったように眉尻を下げた玲が直球で訊 ねてくるから、遥人も遠慮はしないように「外は嫌だ」と訴えた。
「そう」
自然に動いた長い指先が遥人の着ているタートルネックの裾を掴んで引き上げる。
服を脱がされる時にはいつも羞恥に体が震えるけれど、拒むことはしたくないから両手を上げて従った。
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