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「んっ」
露わになった遥人の肌には細い縄が掛けられている。
出かける前に玲によって遥人の体に施されたのは、亀甲縛りと呼ばれるものだが、知識の浅い遥人にはよく分からない。
ただ、手際よく縄をかける指先が敏感な場所を掠めるたび、下肢が疼いて熱を持つから気を逸らすのが大変だった。
「やっぱり、遥人は縛られるのが好きみだいだ」
「そんなこと……あっ!」
胸のあたりの縄を引かれて反論しようと口を開くが、同時に背筋を這い上がる愉悦に声がはしたなく乱れてしまう。
「好きだよな。遥人」
「ふっ……ん」
甘い声音で囁きながら、覆い被さってきた玲が……遥人の唇へキスを落とし、ペニスの形を確かめるようにズボンの上から触れてくる。
――きもち……いい。
縛りたいと言われる時には正直いつも動揺するが、期待に疼いてしまう体はその心よりも正直だった。
***
「名字、御園に戻したんだ」
「うん。いろいろ相談にのってくれてありがとう」
結局、ソファーで玲と抱き合ったあと、バスルームへと移動して、そこで再び遥人は激しく貫かれた。それから軽く食事をとり、今はベッドの上にいる。
今のタイミングで名字を御園に戻したのは、この四月から大学へと通うことになったからだ。これについてはあと数年、資金を貯めて実現しようと遥人は思っていたのだが、そんな時兄に呼び出され、時間がもったいないと告げられた。
気に病むのならば、卒業したあと働きながら返済してもいいと提案された遥人は、玲や真鍋の助言を受け、兄の厚意を素直に受け取ることにした。
遥人の希望を知った玲が、兄へ連絡をとっていたのだと後から真鍋に聞いた時には驚いたけれど、当の本人は隠しているようだから知らないふりをしている。
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