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「会社の方は大丈夫だった?」 「うん。みんな応援してくれて、合格を喜んでくれた。秋山さん、東京出張の時には連絡くれるって」 「ならよかった」  うなじへと触れた玲の手のひらが褒めるかのように髪を撫で、遥人は彼へと甘えるように細い体を擦り寄せた。  想いを伝え合ってから、今はニ度目の春になる。    昨年の春、勤務先へは大学受験をしなおす旨を伝えており、駄目だったら派遣を辞めて、正社員になればいいと上司からは言われていたが、一年間勉強と仕事とを両立し、遥人は再び大学へと合格することができた。 「玲のおかげだよ。勉強、教えくれてありがとう」 「遥人が頑張ったからだ。遠回りさせた時間は取り戻せないけど……これからは、遥人が一番やりたいことをしてほしい」 「そんなことない。遠回りなんかじゃない。俺……玲を好きになって、前を向けたから。だから……感謝してる。玲にはもう……負い目を感じて欲しくない」  素直な気持ちを口にすれば、息を飲むような気配がしたあと優しく体を抱きしめられる。 「わかった」  (ついば)むような優しいキスが何度も顔へと降りてきて、遥人は自分の心の中が満ちていくのを実感した。  今日、引っ越しを終えた遥人は、これから玲と一緒に暮らすこととなる。  玲からは、大学受験に成功したら一緒に暮らそうと言われており、それについてもかなり悩んだが、最終的にはできるだけ彼と一緒にいたいという結論へと辿り着いた。  だから、合格が分かった日……自分から彼へ告げたのだ。  ここから大学へ通いたい……と。

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