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第2話

 昨晩拾った男は、朝になっても目を覚まさない。外傷は見られないので、俺は風邪か何かだと思い、取りあえず濡れた身体を拭き着替えさせた。  長身に見合う服は持っていないので、若干窮屈だろうが、そこは我慢してもらうしかない。  あと一時間ほどで家を出る時間だ。コーヒーを淹れ、パンを焼き軽い朝食を済ませる。  着替えのために部屋に戻ると、男がベッドから起き上がっていた。 「調子はどうだ。俺のことわかるか?」 「昨日の……」 「そうだ。俺は高橋。近くの病院で医師をしている。お前は?」  名を問うと男は少し戸惑いを見せ「セルジュ」と答えた。 「セルジュ? どこの出身だ?」 「それは……」  男が言いよどむ。自らを語りたがらないセルジュという男に、俺は少し興味を持ち始めた。 「まぁ良い。それにしても日本語上手いな」 「色々な国を旅しているので」 「ふーん」  会話が続かない。俺はどちらかと言えば口数が少ないほうだが、セルジュはそれ以上だ。 「何か食うか? 俺は仕事で、もう出なきゃならんのだが」 「結構です」 「そうか。まぁ何かあれば連絡してくれ。鍵はポストで良いから」  俺は病院の電話番号を書いたメモと合い鍵を渡し、家を出た。  今日もまた長い一日が始まる。

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