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第6話 side:セルジュ
私は何も言わずに、高橋と名乗った男の家から出た。
彼の側にいると、あの衝動を抑えられなくなる。
もう二度と、あの人を失いたくない。大切な人を失うのが怖いからだ。
「……っ!」
ひどい眩暈がして、私は地面にうずくまる。遠巻きに私を見ている人々がいるが、気にしていられなかった。もう限界だ。いっそこのまま……。
『生きてるか』
ふと彼にかけられた言葉が蘇る。そうだ、私は死ぬことができない。彼との約束を守るために。
頬に何かが伝う。どうやら私は涙を流していたようだ。死にたくない。私は生きたい。生きねばならない。
「……わかっているよ、エド」
私はあなたのために、これからも生き続ける。そのためには……。
目の前をひとりの男が歩いている。酒に酔っているのか、覚束ない足取りだ。今ならやれる。少し貰うだけだ。私は彼の後を追った。
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