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第13話
区切りが付いたのか、セルジュもコーヒーを飲む。
俺は疑問をぶつけた。
「お前はここを出て行くのか?」
「はい、そのつもりです」
「なあ、セルジュ」
俺はソファーから立ち上がり、彼に近づく。
「しばらく、ここにいろよ」
「……え?」
「駄目か?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
俺はセルジュに、ある取引を持ち掛ける。
「お前にひとつ提案があるんだ」
「提案?」
俺はキッチンに向かい、小ぶりの包丁を取り出した。
「何をする気ですか、高橋さん」
包丁を手にリビングに戻った俺を、セルジュが警戒する。
「お前のことを放っておいたら、またフラフラとどこかに行って、誰かの血を吸うんだろ?」
「……いけませんか」
「俺が見る限り、お前は好き好んで血を吸うタイプには見えない。むしろ苦痛に感じるんじゃないか?」
セルジュの顔が歪む。恋人との話を聞いて、俺は彼が吸血行為自体に、嫌悪感を抱いているのではないかと考えた。
「そこで、だ」
セルジュがこちらを見る。
「俺はエドワードと似た血を持ってるんだろ。だからお前は俺の血を吸えば良い。ただし……」
俺は一度言葉を止め、セルジュの目を見て続けた。
「俺の血を吸うときには、俺にも飲ませろ」
これが俺の提案する取引の正体だ。
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