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第3話

 ユキが高梨家で働くようになって三年あまりが経った頃、俺の中で小さな疑問が生まれた。 「どうしてユキは年を取らないの?」  素朴な質問だ。だがユキは一瞬手を止め、俺を見下ろした。ユキの白い顔に真っ黒な前髪が数本垂れた。それから彼は少し寂しそうな顔をして「私がアンドロイドだからです」と答えた。 「アンドロイドはみんな年を取らないの? ずっと変わらないの?」 「私たちは機械ですから。あなたたち人間とは違います」 「じゃあ俺もアンドロイドになりたい!」 「いえ、それは――」 「アンドロイドになれば、ずっとユキと一緒にいれるんでしょ?」  大きな瞳をキラキラと輝かせて俺はユキに言い寄った。ユキは「困ったお人だ」とため息をこぼすも、俺の小さな肩に手を置き、跪いて視線を合わせて言った。 「もし和希坊ちゃまがアンドロイドになられたら、あなたは一生子供の身体のままですよ」  その答えにハッとした俺は自分の小さな身体を足先まで見て、それから首をぶんぶんと横に振った。 「じゃあ俺早く大人になりたい!」 「素敵な心掛けですね。これからも日々精進して参りましょう」  幼い頃に立てた誓いを、俺はその後も守り続けた。

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