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第6話

 ユキにフラれてからしばらくして、俺の中にある考えが芽生えた。それを叶える為に俺は人が変わったように勉強に勤しんだ。  俺はもう大人になった。ユキに頼りっぱなしだった子供の頃とは違う。将来の目標もでき、中身も大人になった。 「ユキ」  あの日と同じくらい寒い日の夜。部屋に訪れたユキに俺は思い切って声をかけた。俺の声に滲む熱を感じ取ったのか、ユキは俺の目を見て、続きを促した。 「俺はユキを愛している」 「……和希さま、お戯れはよしてください」 「本気だ」  そう告げた後、ユキは何も返してはこなかった。俺の声を聞いているのかも分からない。  まるで感情のない機械に話しかけている感覚だ。いつものユキならば俺の発した言葉に、きちんと言葉で返してくれる。どうしてこんな時だけユキはただの機械になってしまうのだろう。虚しさだけが募った。 「……俺もアンドロイドになりたい」  ぽろりとこぼれた本心は、だがしかし、彼には届いていた。 「まだそのような戯言を。あなたはもう子供ではありませんよ」 「だからこそだ!」  会話が続いた喜びと共に、ぴしゃりと窘められた悔しさが沸き起こって、気づけば俺は熱く語り出していた。 「この国の技術をもってすれば人間をアンドロイドにすることくらいわけないだろう? 俺がこれまで何を学んできたと思ってるんだ。専門技術を一から学べる大学に行って、いつかはユキが生まれたように、俺もアンドロイドを作る側の人間になりたいんだ。でもそれじゃ足りない。俺は、俺自身をアンドロイドに改造して、ユキと一緒に同じ時を過ごしたい」 「……」 「ユキ、一生俺の傍に居ろ」  俺はユキの答えを待った。

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