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思ってたのと、違うっ!

「ほら、樹。  とりあえず、水でも飲め。」 小型の冷蔵庫から取り出した、ペットボトルのミネラルウォーター。 彼はベッドに腰を掛け、上機嫌な様子ではーいと答え、元気に手を挙げそれを受け取った。 「...ったく、人の気も知らないで。」  ぽそりと、呟いた。 すると彼はクスリと笑い、思わぬ言葉を口にした。 「知ってるよ?  ...俺の事どうにかしたいって、ずっと思ってたんだよね?」 ...はい? いつもと異なる、口調。 そして身に纏うその雰囲気は...何て言うか、全くもって可愛くない。 「いつ誘って来るのかなぁって、ずっと待ってたんだけどね。  センパイ、マジでヘタレなんだもん。  こっちが全部お膳立てしてやってんのに、まーだそうやってウジウジしてさぁ。」 ネクタイを緩めながら、クククと肩を揺らして笑うコイツは一体、誰だ? ゆらりと立ち上がろうとする彼を見て、慌てて駆け寄った。 でも彼は酔っているふりをしていただけで、完全なる素面だった。 「あんなもんで、酔えるかよ。  イメージ壊したら誘いに乗らないと思ったから、くそ甘いの我慢して飲んだけどさ。  ...あー、マジで胸焼けしそう。」 言いながら、強く手を引かれ...気付くと俺は壁際に、追いやられていた。 何この状況...これってたぶんだけど、壁ドンだよな? 思ってたのと、違うっ!! *** 「あはは、あの...樹?  酔ってる...んだよな?  ほら、落ち着けって!」 あまりに予想外の展開に、激しく動揺する俺。 樹は可笑しそうにまた笑い、そのまま俺の足と足の間に膝をねじ込んできた。 これっていわゆる...股ドンってヤツかっ!? ネットかなんかでネタ的なのは見たことはあったけれど、自分がされる日が来るとか、夢にも思わなかった。 しかも相手はあの、恋い焦がれて止まなかった天使、樹って...なんだ、この悪夢。 「センパイが、落ち着けよ。  オタオタしてんじゃねぇよ、いい年して。」 いつもの穏和な表情とはまるで違う、鋭い目付き。 困惑し、なおもされるがままでいると彼はニヤリと口角をあげ、楽しげに笑った。 「センパイ、夢を壊して悪いんだけどさぁ。  ...俺、タチなのね?  だからおとなしく俺に犯されて、可愛く鳴いてよ。」 タチ?タチって何だ? でもこの流れから察するに...俺が、掘られる側っ!? 絶対に、嫌だっ!! ようやく状況を理解し、コイツの悪の手から逃れようとしたんだけれど、見た目に反して樹は馬鹿みたいに力が強くて、抵抗を試みてもびくともしなかった。 「あんま、暴れんなよ。  ...抵抗されたら興奮して、優しく出来ない。」 「抵抗なんか、するに決まってんだろうがっ!  離せ...この馬鹿力っ!似非(えせ)天使っ!」 すると彼はプッと吹き出し、それから意地の悪い笑みを浮かべた。 「あー...なるほど。  酷くしていいって事?...了解。」 ガン、と乱暴に床に肩を押し付けられ、そのままキスで唇を塞がれた。 ...ホント、何なんだよこの状況。 *** 触れるだけではなく、彼の舌は俺の唇を割り、中に侵入してきた。 「んっ...くっ...!や...めろって!」 体を押し戻そうと力を込めてみても、やっぱり微動だにしない。 強引に舌を絡めとり、口内を好き勝手に犯された。 しかもウブな見た目に反し、コイツってば...めっちゃ上手い。 力が抜け、自然と腰が落ちてしまったんだけど...すっかり忘れてた。 そこには樹の膝が、意地悪く待ち構えていたんだった。 「自分から、擦り付けて来るとか...淫乱だなぁ。」 ようやく唇を解放してくれたものの、彼の口から出たのは呆れたような、小馬鹿にしたような言葉だった。 「お前...マジでふざけんなっ!  帰る...離せよ、ホント。」 睨み付けて言ったのに、樹は全く怯む事なく、むしろワクワクした様子で答えた。 「わー!やっぱセンパイ、アホだな。  ...帰さないし、離さねぇよ。」 そのまま乱暴に、再度腕を掴まれて...転がされた先は、ふかふかベッドの上だった。 ...まずい、どう考えてもまず過ぎる展開だ。 情けない事に、ちょっと泣きそうになる俺。 それを見て樹は頬を紅潮させ、恍惚とした表情で言いやがった。 「その顔、最高。  グチャグチャに、ぶち犯してぇ。  ...いいよね、センパイ?」 ...いいわけ、あるかぁぁぁあっ!!

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