3 / 7
思ってたのと、違うっ!
「ほら、樹。
とりあえず、水でも飲め。」
小型の冷蔵庫から取り出した、ペットボトルのミネラルウォーター。
彼はベッドに腰を掛け、上機嫌な様子ではーいと答え、元気に手を挙げそれを受け取った。
「...ったく、人の気も知らないで。」
ぽそりと、呟いた。
すると彼はクスリと笑い、思わぬ言葉を口にした。
「知ってるよ?
...俺の事どうにかしたいって、ずっと思ってたんだよね?」
...はい?
いつもと異なる、口調。
そして身に纏うその雰囲気は...何て言うか、全くもって可愛くない。
「いつ誘って来るのかなぁって、ずっと待ってたんだけどね。
センパイ、マジでヘタレなんだもん。
こっちが全部お膳立てしてやってんのに、まーだそうやってウジウジしてさぁ。」
ネクタイを緩めながら、クククと肩を揺らして笑うコイツは一体、誰だ?
ゆらりと立ち上がろうとする彼を見て、慌てて駆け寄った。
でも彼は酔っているふりをしていただけで、完全なる素面だった。
「あんなもんで、酔えるかよ。
イメージ壊したら誘いに乗らないと思ったから、くそ甘いの我慢して飲んだけどさ。
...あー、マジで胸焼けしそう。」
言いながら、強く手を引かれ...気付くと俺は壁際に、追いやられていた。
何この状況...これってたぶんだけど、壁ドンだよな?
思ってたのと、違うっ!!
***
「あはは、あの...樹?
酔ってる...んだよな?
ほら、落ち着けって!」
あまりに予想外の展開に、激しく動揺する俺。
樹は可笑しそうにまた笑い、そのまま俺の足と足の間に膝をねじ込んできた。
これっていわゆる...股ドンってヤツかっ!?
ネットかなんかでネタ的なのは見たことはあったけれど、自分がされる日が来るとか、夢にも思わなかった。
しかも相手はあの、恋い焦がれて止まなかった天使、樹って...なんだ、この悪夢。
「センパイが、落ち着けよ。
オタオタしてんじゃねぇよ、いい年して。」
いつもの穏和な表情とはまるで違う、鋭い目付き。
困惑し、なおもされるがままでいると彼はニヤリと口角をあげ、楽しげに笑った。
「センパイ、夢を壊して悪いんだけどさぁ。
...俺、タチなのね?
だからおとなしく俺に犯されて、可愛く鳴いてよ。」
タチ?タチって何だ?
でもこの流れから察するに...俺が、掘られる側っ!?
絶対に、嫌だっ!!
ようやく状況を理解し、コイツの悪の手から逃れようとしたんだけれど、見た目に反して樹は馬鹿みたいに力が強くて、抵抗を試みてもびくともしなかった。
「あんま、暴れんなよ。
...抵抗されたら興奮して、優しく出来ない。」
「抵抗なんか、するに決まってんだろうがっ!
離せ...この馬鹿力っ!似非 天使っ!」
すると彼はプッと吹き出し、それから意地の悪い笑みを浮かべた。
「あー...なるほど。
酷くしていいって事?...了解。」
ガン、と乱暴に床に肩を押し付けられ、そのままキスで唇を塞がれた。
...ホント、何なんだよこの状況。
***
触れるだけではなく、彼の舌は俺の唇を割り、中に侵入してきた。
「んっ...くっ...!や...めろって!」
体を押し戻そうと力を込めてみても、やっぱり微動だにしない。
強引に舌を絡めとり、口内を好き勝手に犯された。
しかもウブな見た目に反し、コイツってば...めっちゃ上手い。
力が抜け、自然と腰が落ちてしまったんだけど...すっかり忘れてた。
そこには樹の膝が、意地悪く待ち構えていたんだった。
「自分から、擦り付けて来るとか...淫乱だなぁ。」
ようやく唇を解放してくれたものの、彼の口から出たのは呆れたような、小馬鹿にしたような言葉だった。
「お前...マジでふざけんなっ!
帰る...離せよ、ホント。」
睨み付けて言ったのに、樹は全く怯む事なく、むしろワクワクした様子で答えた。
「わー!やっぱセンパイ、アホだな。
...帰さないし、離さねぇよ。」
そのまま乱暴に、再度腕を掴まれて...転がされた先は、ふかふかベッドの上だった。
...まずい、どう考えてもまず過ぎる展開だ。
情けない事に、ちょっと泣きそうになる俺。
それを見て樹は頬を紅潮させ、恍惚とした表情で言いやがった。
「その顔、最高。
グチャグチャに、ぶち犯してぇ。
...いいよね、センパイ?」
...いいわけ、あるかぁぁぁあっ!!
ともだちにシェアしよう!