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掘るか、掘られるか

俺をベッドに組み敷き、押し倒した状態で言われた言葉。 「んー...、残念。  さすがにまだ、勃ってない...か。」 当たり前だ、馬鹿野郎。 こんな状況で、勃つわけあるか。 つまらなさそうに、ツンと尖らされた薔薇色の唇。 一瞬その愛らしさに見惚れそうになったけれど、頭を激しく左右に振り、現実に目を向けた。 「あー、そっか。なるほど、なるほど。」 ニヤニヤと、ゲスな笑いを浮かべる樹。 ...なんだ、今度は。 どう考えてもろくでもない事を思い付いたに違いないってのだけは、分かったが。 「...何だよ?」 すると彼は俺にふわりと抱き付き、メチャクチャ可愛く微笑んで言った。 「ねね、センパイ!  ...僕と、気持ちいい事しよ?」 くっ...。この悪魔め、マジで最悪だ。 男の純情を、弄びやがって。 腹立たしいのに、素直に反応する俺の息子。 それを再度膝で押し、確認して...樹はまた微笑した。 「...イヤ?」 上に乗ったまま、甘えた声での更なる追撃。 コイツの華奢で真っ白な体を、妄想の中で何度も穢し、犯した。 ...何度も、何度も。 可憐かつ卑猥にねだる姿がいま現実のものとなっているというのに、こんなの全くもって嬉しくない。 「...嫌に決まってんだろ、阿呆。」 睨んでそう言うと、樹は一瞬俺から顔を背け、軽く舌打ちをした。 ...見逃してないからな、今の。 誰が、騙されるかっ! *** 「でも体は、反応してるよ?  ...ねぇ、僕としようよ?」 首筋に何度もキスを落とされ、舌を這わされる。 そして下半身に伸ばされた、俺よりも小さな、女の子みたいな手。 ゆっくり優しく撫で上げられると、そこは情けない事に完全に立ち上がった。 男の癖にコイツからは誘うような甘い薫りがして、俺の理性と本能はぐらんぐらん揺れまくりだけれど、こんなのに流される訳にはいかない。 「俺が挿れる側なら、いいよ。」 絶対にコイツが折れるわけないのを知りながら、この状況を打破したくて笑顔で言った。 すると樹はクスリと笑い、史上最高ともいえるほどラブリーチャーミーなエンジェルスマイルを繰り出した。 「やだよ...僕のお願い、聞いてくれないの?  大好きだよ、センパイ。」 唇ではなく、今度は頬にキスされた。 くっ...、こんなの、卑怯過ぎるっ! ムカつくのに、荒い吐息が口から漏れるのを止められない。 すると樹はさっきまでの愛らしいモノではなく、妖艶ともいえるような笑顔で言った。 「センパイ、意外とねばるなぁ。  ならさぁ...妥協案ね。  俺がまず先に、口でしてやるよ。  ...だからその後、抱かせてよ。」 「...はぁ?」 まるで妥協された気がしない、糞みたいな提案。 再び強くなる、力。 愛らしさなんて皆無な、勝ち気な瞳。 「俺さぁ...上手いよ?  めっちゃ気持ちよくしてやるから、ヤらせろ。」 樹は見せ付けるみたいに自分の指をねっとりと舐め、可愛らしい口にくわえた。 *** あの唇で、俺のを...。 それを想像しただけで、更に俺のあそこは熱く、かたくなった気がした。 ...無駄に。 「交渉成立って事で。  いただきまーす。」 返事を待たず、身ぐるみを剥ごうとする暴君。 「ちょ...、そんなの許してないっ!  脱がそうとすんな、馬鹿っ!」 「はいはい、すぐに気持ちよくしてあげるね。」 クククと笑いながら、俺の抵抗をモノともせず、器用に脱がせていくコイツ。 ヤバイ、場数が違う。 ...俺の貞操が、アラサーにして危機に晒されているのを、改めて感じた。 あっさり全裸に剥かれ、再び乱暴にベッドに押し倒される。 「俺も、脱いだ方がいい?」 腰に跨がるようにして座った状態で前髪をかきあげ、聞かれた。 「脱がんでいいっ!  って言うか、離せーっ!」 ...俺の絶叫が、虚しく室内に木霊した。

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