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天国と、地獄
俺の言葉をガン無視したまま、一方的に続けられる会話。
...ホント一体何なんだ、このメチャクチャなS男は。
こんなヤツに恋い焦がれていたのかと思うと、自分の見る目の無さに泣きたくなる。
でももし泣いたりしたら、コイツをますます喜ばせるだけだから、絶対に泣いてなんかやらないけどなっ!
なのにスーツのジャケットを脱ぎ捨て、緩めていたネクタイを外し...Yシャツまでも、脱ごうとするその姿から、目が離せない。
コイツの本性がわかり、これからヤられるかも知れないって言うのに、だ。
しかしそこで樹は俺に乗ったまま、はたと気が付いたように聞いた。
「あっ、そうだ!...ねね、センパイ。
全部脱ぐのと、シャツは着たままの着衣プレイ、どっちがいい?」
...コイツに恥じらいというモノは、無いのか?
こてんと首をかしげ、愛らしく笑うその姿は、可憐なのに卑猥。
妄想の上を行くそんな仕草に、俺の心臓は壊れそうなくらいバクバク鳴った。
「知るか!って言うか脱ぐなって言っただろ?
...でもって、とっとと離せ。」
がるると吠えるようにそう言うと、樹はクスクスと可笑しそうに笑った。
「んー...、素直じゃないなぁ。
ここはもう、こんなになってる癖に。」
再び下半身に触れる、手。
でも完全に身ぐるみを剥がれた今は、その柔らかな手は直接、完全に勃起したあそこに触れていて...あぁもう、ホント勘弁してくれよ。
その上目の前には夢にまで見た、セクシーバージョンな樹の姿がある訳で。
「もう、先っぽから溢れてる。
...舐めてあげるね?」
樹の口角が、意地悪く上がる。
しかもYシャツの前ははだけ、下はボクサーパンツのみというオプション付き。
「...やめろ。」
弱々しく、口先だけで抵抗したけれど、それはまたしても無視された。
樹はまるで子猫みたいに体を丸め、俺の股間に可愛らしい唇を寄せた。
***
ペチャペチャと音をたてて舐めながら上げられた、蕩けるような視線。
俺に見せ付けるみたいにいやらしく蠢く、樹の赤い舌。
...こんなの、眼福過ぎる。
とは言えこの天国みたいなサービスの代償を考えたら、絶対に今すぐ止めさせて、この場から逃げ出さないといけないんだろうけれど。
無言のまま何度も舌先で、下から上に向かって舐め上げられる。
自分で上手いと言うだけの事は、あり...過去にそういった行為を女の子にして貰った事はあったけれど、それとは全く別次元の快楽。
更にその後ぱくりと口にくわえられ、吸い付きながら上下に頭を揺らされた瞬間...あっさり果てた。
「んんっ...くっ...!
出すなら、出すって言えよ。
そんなに、良かった訳?
...それともセンパイ、早漏なの?」
ゴクンとそれをすべて飲み干し、舌先で自身の唇をペロリと舐め、聞かれた言葉。
「ちげぇよ...。
最近忙しくて、抜いてなかっただけだ。」
本当は昨日も樹をオカズにして抜いたけれど、そんな事を言う義理もないから咄嗟に、嘘を吐いた。
「ふーん...あっそ。
まぁでもこれで、契約成立だよね?」
ニヤリと笑って俺の体から降りたと思うと、そのままうつ伏せにさせられた。
「えっと...無理無理っ!!
俺は、ホモじゃないっ!!」
往生際悪く、暴れたのだけれど。
「獲物はさぁ...イキがいい方が、楽しいよね。
...堕ちた瞬間の顔が、スッゲェ楽しみだわ。」
無理矢理腹の下に手を入れて、強引に四つん這いにさせられた。
恐る恐る振り返った、視線の先で。
...可愛い顔をした悪魔が、ニタリと笑った。
***
いつの間にか手元に置かれていたローションのボトルを手に取り、それを伸ばしていく樹。
マジか、これ。
...この年 にして、後ろの処女を失うのかよ、俺。
「はーい、センパイ。
力、抜いててね?」
ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべ、言われた。
「やなこった、お断りだっ!
...抜いたら絶対、ヤられるだろ?」
睨み付け、叫んだ。
すると樹はわざとらしく、やれやれとでも言いたげに肩を竦めてみせた。
そして放たれた言葉は、俺を絶望の闇へと叩き落とした。
「は?なんか勘違いしてない?
...力を抜かなくても、無理矢理突っ込むけど?
痛くないようにっていう俺の優しい配慮、無駄にしないでくれる?」
前言撤回。コイツは、ただのS男じゃない。
...鬼畜クソどS男だ。
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