5 / 7

天国と、地獄

俺の言葉をガン無視したまま、一方的に続けられる会話。 ...ホント一体何なんだ、このメチャクチャなS男は。 こんなヤツに恋い焦がれていたのかと思うと、自分の見る目の無さに泣きたくなる。 でももし泣いたりしたら、コイツをますます喜ばせるだけだから、絶対に泣いてなんかやらないけどなっ! なのにスーツのジャケットを脱ぎ捨て、緩めていたネクタイを外し...Yシャツまでも、脱ごうとするその姿から、目が離せない。 コイツの本性がわかり、これからヤられるかも知れないって言うのに、だ。 しかしそこで樹は俺に乗ったまま、はたと気が付いたように聞いた。 「あっ、そうだ!...ねね、センパイ。  全部脱ぐのと、シャツは着たままの着衣プレイ、どっちがいい?」 ...コイツに恥じらいというモノは、無いのか? こてんと首をかしげ、愛らしく笑うその姿は、可憐なのに卑猥。 妄想の上を行くそんな仕草に、俺の心臓は壊れそうなくらいバクバク鳴った。 「知るか!って言うか脱ぐなって言っただろ?  ...でもって、とっとと離せ。」 がるると吠えるようにそう言うと、樹はクスクスと可笑しそうに笑った。 「んー...、素直じゃないなぁ。  ここはもう、こんなになってる癖に。」 再び下半身に触れる、手。 でも完全に身ぐるみを剥がれた今は、その柔らかな手は直接、完全に勃起したあそこに触れていて...あぁもう、ホント勘弁してくれよ。 その上目の前には夢にまで見た、セクシーバージョンな樹の姿がある訳で。 「もう、先っぽから溢れてる。  ...舐めてあげるね?」 樹の口角が、意地悪く上がる。 しかもYシャツの前ははだけ、下はボクサーパンツのみというオプション付き。 「...やめろ。」 弱々しく、口先だけで抵抗したけれど、それはまたしても無視された。 樹はまるで子猫みたいに体を丸め、俺の股間に可愛らしい唇を寄せた。 *** ペチャペチャと音をたてて舐めながら上げられた、蕩けるような視線。 俺に見せ付けるみたいにいやらしく蠢く、樹の赤い舌。 ...こんなの、眼福過ぎる。 とは言えこの天国みたいなサービスの代償を考えたら、絶対に今すぐ止めさせて、この場から逃げ出さないといけないんだろうけれど。 無言のまま何度も舌先で、下から上に向かって舐め上げられる。 自分で上手いと言うだけの事は、あり...過去にそういった行為を女の子にして貰った事はあったけれど、それとは全く別次元の快楽。 更にその後ぱくりと口にくわえられ、吸い付きながら上下に頭を揺らされた瞬間...あっさり果てた。 「んんっ...くっ...!  出すなら、出すって言えよ。  そんなに、良かった訳?  ...それともセンパイ、早漏なの?」 ゴクンとそれをすべて飲み干し、舌先で自身の唇をペロリと舐め、聞かれた言葉。 「ちげぇよ...。  最近忙しくて、抜いてなかっただけだ。」 本当は昨日も樹をオカズにして抜いたけれど、そんな事を言う義理もないから咄嗟に、嘘を吐いた。 「ふーん...あっそ。  まぁでもこれで、契約成立だよね?」 ニヤリと笑って俺の体から降りたと思うと、そのままうつ伏せにさせられた。 「えっと...無理無理っ!!  俺は、ホモじゃないっ!!」 往生際悪く、暴れたのだけれど。 「獲物はさぁ...イキがいい方が、楽しいよね。  ...堕ちた瞬間の顔が、スッゲェ楽しみだわ。」 無理矢理腹の下に手を入れて、強引に四つん這いにさせられた。 恐る恐る振り返った、視線の先で。 ...可愛い顔をした悪魔が、ニタリと笑った。 *** いつの間にか手元に置かれていたローションのボトルを手に取り、それを伸ばしていく樹。 マジか、これ。 ...この年(アラサー)にして、後ろの処女を失うのかよ、俺。 「はーい、センパイ。  力、抜いててね?」 ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべ、言われた。 「やなこった、お断りだっ!  ...抜いたら絶対、ヤられるだろ?」 睨み付け、叫んだ。 すると樹はわざとらしく、やれやれとでも言いたげに肩を竦めてみせた。 そして放たれた言葉は、俺を絶望の闇へと叩き落とした。 「は?なんか勘違いしてない?  ...力を抜かなくても、無理矢理突っ込むけど?  痛くないようにっていう俺の優しい配慮、無駄にしないでくれる?」 前言撤回。コイツは、ただのS男じゃない。 ...鬼畜クソどS男だ。

ともだちにシェアしよう!